「先日、スマホを見ながら歩いていたら自転車に衝突しました。
腕の骨を折る事故でした。
自転車を運転していた人に治療費を請求したら、相手は『あなたがスマホを見て歩いていて急に立ち止まるのは、あなたの不注意でしょ。』と、逆に自転車の修理費を請求されました。
やはり、私が悪いのでしょうか?
修理費を払わなくてはならないでしょうか?」
2 本件では、交通事故における過失相殺・過失割合が問題になります。
交通事故における過失割合は、第33回「交通事故について」でも述べました。
その時は、「交通事故における過失割合は、事故態様によって、ある程度類型化されている」というお話をしました。
そして、その類型化にあてはめて、過失割合のベースをお伝えしました。
3 ただし、今回は、そうではありません。
この類型化というのは、「歩行者と自動車」「自動車同士」「バイクと自動車」「自転車と自動車」などについては、なされているのですが、「歩行者と自転車」については、なされていません。
何故かと言うと、双方が、必ずしも道交法上のルールを熟知しているとは言えず、道交法に従った通行をしていない場合も多いからです。
自転車については、自動車や原動機付自転車などと異なり、免許が要らず、誰でも自由に乗ることが出来るため、法的規制について、あまり意識されていません。
また、歩行者についても同様で、法的規制について、あまり意識されていません。
このような状況で、「歩行者と自転車の事故」を「歩行者と自動車の事故」と同様に扱ってよいのか疑問がありますし、逆に、自転車の責任を軽くし過ぎるのも疑問が残ります。
4 では、今回のような「歩行者と自転車の事故」について、過失割合をどのように考えるかというと、過去の裁判例などを参考にして、ケースバイケースで考えます。
今回は、「スマホを見ながら歩いていたところ、自転車に衝突した」ということは分かりますが、それ以外の詳しい事情が分からないので、正確なことは言えませんが、歩行者の前方不注視の事案ということは言えるのかもしれません。
似たような事案で「傘を低く前方に出してさし、前方を見ることができない状態で道路を歩行していた歩行者」に3割の過失を認めた事案があります。
ただ、これも「傘を低く前方に出してさし、前方を見ることが出来ない状態」だった事案が全て3割の過失があるというわけではありません。
今回も正面衝突だったのか、横からの衝突だったのかでも違うことになります。
少なくとも、いくらかの過失はあると思います。
5 そして、治療費、修理費それぞれについて、双方の過失割合によって処理することになります。
治療費については、自転車運転者に対して、その過失割合分を請求し、修理代については、質問者の方の過失割合分を自転車運転者に支払うことになります。
といっても、現実には、このようにすることは煩雑なので、差し引き計算・相殺をして、差額をどちらかが払うことになります。
6 最近は、自転車の通行ルールも変わりました。
自転車と歩行者の事故が増えてきたために、自転車の通行マナーなどが問題となってきました。
このような状況から考えると、自転車の規制を厳しくし、過失割合の類型化もなされてくるかもしれません。
ただ、個人的には、今の道路状況では、自転車が非常に通行しにくくなっていて、自転車の通行ルールだけを厳しくすることには疑問を感じています。
道路状況の整備を早急になされるべきです。
交通事故に関するご相談は、J.ウィング総合法律事務所(弁護士羽賀裕之)まで。
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