2014年06月27日

第40回「守秘義務について」

1 弁護士の守秘義務について。
  弁護士法23条には、「弁護士又は弁護士であった者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う。」と規定されています。
  また、日弁連が定めている倫理規定である弁護士職務基本規程23条には、「弁護士は、正当な理由なく、依頼者について職務上知り得た秘密を他に漏らし、又は利用してはならない。」と規定されています。
  さらに、正当な理由なく秘密を洩らした場合には、刑法134条の秘密漏示罪によって罰せられることになります。
  このように、弁護士の守秘義務については、厳しく規制されています。

2 弁護士が、相談者から聞いたことをペラペラとしゃべってしまえば、相談者は安心して弁護士に相談することが出来ません。
  逆に、弁護士が秘密を守ってくれるという保障があれば、相談者は安心して弁護士に相談することができます。
  弁護士と相談者・依頼者との間で信頼関係を維持するにあたって、非常に重要な責務です。
  このように秘密を守ることが重要であることから、先ほどの弁護士法においては、義務だけでなく、「権利を有し」と規定されています。
  つまり、国家などから秘密の開示を求められた場合に、これを拒絶することが出来なければ、義務だけを定めていても意味がないので、秘密を守る権利も保障されています。

3 弁護士以外の人が相談を受けた場合も同様に、他の人にはしゃべらない方がいいです。
  民事裁判においては、基本的にあらゆるものが証拠となります。
  裁判前に話したことによって揚げ足を取られかねません。
  戦略的に、裁判前に色々なことを公表することはあり得るかもしれませんが、少なくとも何の方針もなく公表することは避けるべきです。

4 最近は、ブログやツイッターなど、一般の人でも、不特定多数の人に情報を発信する手段があります。
  その手軽さから、情報拡散力というものに対する意識が希薄になりがちですが、「実際に多数の人が見るか否か」ではなく、「見ようと思えば誰でも見られる」ということが重要です。
  そのような強力な手段であるということを、使っている人が自覚しなければいけません。

5 弁護士業務については、弁護士法や、弁護士職務基本規程などによって、色々な規制がなされています。
  弁護士の広告に関しても、日弁連によって、「弁護士の業務広告に関する規程」というのが定められています。
  そこでは、禁止される広告がいくつか定められていますが、その中には、「訴訟の勝訴率」を表示した広告というものがあります。
  このような広告を許すと、どんな事件でも勝訴すると、一般の人に誤解を与えるため、禁止されています。
  テレビドラマで、「負け知らずの弁護士」というのがありますが、仮に「勝訴率100%弁護士!」という広告を出したら、すぐに弁護士会から処分を受けるでしょう。


  J.ウィング総合法律事務所(弁護士羽賀裕之)は、秘密を厳守いたします。
  安心して、ご相談ください。
  http://jwing-lawoffice.com
  東京都新宿区高田馬場1-28-18 和光ビル407

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posted by 弁護士羽賀裕之 at 20:54| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

第39回「特定秘密保護法案について」

(注:以下は、平成25年12月5日に放送したものです。)
1 質問
  「先日、『アメリカの情報機関にドイツ首相の携帯電話が盗聴されていた』と報道がなされました。
   国家の情報収集は、日ごろから行われていると思いますが、このような報道にはビックリしました。
   日本では、情報管理体制というのは、どのようになっているのでしょうか?」

2 先日、国会に「特定秘密保護法案」という法案が提出されましたが、これは、今の質問に深く関わっています。
  「深く関わる」というよりも、「前提となっている」ものですが、一言で言うと、「日米同盟強化のために、情報統制を徹底しましょう」というものです。
  これから述べるのは、特定秘密保護法案の概略、問題点などですが、その根底には、日米同盟があります。
  特定秘密保護法案は、日本の今後の方向性に大きくかかわるということを認識し、政治状況を勉強する必要があります。

3 「特定秘密保護法案」とは、
  ①まず、「防衛」「外交」「『特定有害活動』なるもの」「テロリズム」に関する事項で、その漏洩が、日本の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるものを「特定秘密」として指定します。
  ②そして、「特定秘密」を取り扱う者に対する「適性評価」と呼ばれる審査を行い、
  ③「特定秘密」の漏洩を行ったものに対し、重い罰則を与える
  という法案です。

4 特定秘密保護法案の問題点。
  まず、
  ①保護対象となる「特定秘密」の範囲が広範かつ不明確であること
  次に、
  ②「適性評価制度」が、家族の生年月日や国籍、本人の経済的状況の調査など非常に広範囲に及ぶため、重大なプライバシー侵害が生じるおそれがあること
  そして、
  ③処罰範囲が広範なため、取材に対して萎縮し、国民の知る権利が侵害されるおそれがあること
  などです。

5 「知る権利」について。
  まず、「表現の自由」が憲法上保障されています。
  そして、現代の高度情報化社会においては、発信するだけでなく、情報を収集する権利、つまり「知る権利」が保障されていなければ、「表現の自由」が保障された意味がありません。
  そこで、「知る権利」も憲法上保障されていると考えられています。
  そして、「知る権利」に資する「報道の自由」や「取材の自由」も憲法上保護を受けます。

6 「特定秘密保護法案」では、「国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない。」と規定され、
  また、「出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とする。」と規定されてあります。
  前者については、抽象的な規定にすぎず、この規定によって、本当に知る権利が脅かされることはないのか、甚だ疑問です。
  後者については、「西山記者事件判決」という最高裁判決を参考にしていると思われますが、これについても「専ら公益を図る目的」や「著しく不当な方法」など抽象的な規定となっていて、恣意的な運用がなされるおそれがあります。


  J.ウィング総合法律事務所(弁護士羽賀裕之)は、特定秘密保護法に反対です。
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posted by 弁護士羽賀裕之 at 16:30| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

2014年06月26日

第38回「外食メニュー偽装表示について」

(注:以下は、平成25年11月26日に放送したものです。)
1 質問
  「最近、外食産業で、メニューに事実と違う表記がなされていたということが次々に明らかになっています。
   老舗のホテルで、『偽装ではなく誤表示』と会見が行われたのを見て、ショックを隠せません。
   このようなメニュー表示について、法規制はどのようになっているのでしょうか?」

2 景表法という法律があります。
  景表法については、第30回「当選者数水増し問題について」でも取扱いました。
  前回問題になったのは、景表法4条1項2号の「有利誤認」というものですが、今回は、景表法4条1項1号の「優良誤認」が問題になります。
  「優良誤認」とは、商品や役務の品質について、実際のものや、他社のものよりも、著しく優良であると誤認させるような表示のことをいいます。
  今回、実際には安価な食材を使っていたにもかかわらず、高価な食材を使っていると表示したということがありましたが、これは「優良誤認」にあたります。

3 第30回「当選者数水増し問題について」でも述べましたが、景表法に違反すると「措置命令」というものの対象になります。
  「措置命令」とは、消費者庁長官が、違反者に対し、その行為の差し止めや、再び起こらないように防止措置を講じることなどを命令することをいいます。
  措置命令に違反した場合は、罰則の対象となります。
  法定刑は、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金です。

4 景表法違反かどうかという点では、故意か過失かは問いません。過失でも景表法違反となります。
  「誤表示」と過失を強調しているのは、少しでも処分を軽くしたいという意図からだと思われます。

5 メニュー表示を信じた人たちは、返金を求めることができるかについて。
  景表法というのは、取締法規といって、業者と国との間の関係を定めた法律なので、直接消費者との関係に影響があるものではありません。
  つまり、景表法違反だからといって、直ちに消費者との契約の効力が否定されるものではありません。
  錯誤によって無効だと言う余地はあると思いますが、それでも全ての契約が無効になるとはいえないでしょう。
  「返金に応じます」と言っているところがありますが、あれは、あくまで企業イメージの悪化を出来るだけ防ごうとして自主的にやっているものと思われます。

6 優良誤認に当たるかどうかの明確な基準がないのが現状です。
  スーパーなどでパックに入れられて売られる食材などは、JAS法という法律によって、明確な基準が決められています。
  しかし、外食産業におけるメニュー表示は、このJAS法の対象外なのです。
  こういった現状を踏まえ、先日、消費者庁は、外食メニューについて、「食品表示法」という法律に盛り込む方向で検討し始めました。
  「食品表示法」というのは、今ある「食品衛生法」「JAS法」「健康増進法」を一元化し、食品の表示を規制する新しい法律です。
  ただし、「食品表示法」が施行されるのは、平成27年6月、と間があるため、予め、先ほどの3つの法律のいずれかに外食メニューに関する規制を盛り込むことも消費者庁は検討しているとのことです。


  消費者問題に関するご相談は、J.ウィング総合法律事務所(弁護士羽賀裕之)まで。
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posted by 弁護士羽賀裕之 at 17:42| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

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