「商社の広報部で働いています。広報部は、女性7名、男性9名です。
半年前に男性社員Aさんと廊下で立ち話をしていたところを、上司の女性社員Bさんに目撃されました。
それから、いじめが始まりました。
仕事が終わる寸前に、毎日Bさんから『この書類、ミスが沢山あるので、明日の朝までに修正してください。』『当然、あなたのミスなので、残業代は出ませんよ。』と言われ、他の女性社員全員は帰ってしまいます。
今まで仲良くお昼を一緒にしていた女性社員たちにも、Bさんの顔色を見て無視されてしまいます。
プレゼン用の企画書を提出しても、ボツにされてしまいます。
最終の企画書案は、私が作った企画書を少し変えただけで、Bさんの名前で提出されたりしています。
いじめをやめてもらう方法はあるのでしょうか?」
2 パワーハラスメント、略してパワハラと呼ばれるものですね。
パワハラについては、最近、厚労省が定義づけを行いました。
それによると、パワハラとは
「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」
をいいます。
パワハラというと、上司から部下に対するものをイメージされると思いますが、同僚同士であっても、先ほどの定義にあてはまれば、パワハラです。
3 先ほどの定義は、抽象的な面もあるので、厚労省は、パワハラの類型として6つ挙げています。
一つ目が、暴行・傷害。
二つ目が、脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言。
三つ目が、隔離・仲間外し・無視。
四つ目が、業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害。
五つ目が、業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと。
六つ目が、私的なことに過度に立ち入ること。
です。
質問者の場合をこれにあてはめると、まず、ミスの指摘については、本当にミスであれば、ミスの指摘自体はパワハラにあたりません。しかし、「明日の朝までに」というのが、そこまで急ぐ必要のないことであり、しかもそれが不可能であることであれば、四つ目の「業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制」にあたります。
また、「残業代は出ませんよ」というのは、本来受け取れるべきものについて、請求させないようにするものであり、脅迫・暴言などにあたると思われます。
次に女性社員による無視というのは、三つ目の類型にあたります。
最後に企画書の点は微妙ですが、仕事の妨害に当たり得ると思います。
4 パワハラをやめてもらう方法ですが、その上司や周りの同僚に言っても、難しいでしょう。
その上司のさらに上の人に相談したり、会社に相談窓口があればそこに相談することが考えられます。
厚労省も、パワハラ対策については、組織で取り組むことが求められています。
また、パワハラを放置していれば、会社として、職場の環境を適切に保っていなかったということで、損害賠償請求されるおそれもあります。
他の会社もそうですが、パワハラ対策が十分になされることを望みます。
5 パワハラによる損害賠償請求で、一番難しいのは、それをどう立証するかです。
会社内部の出来事で、しかも、言動など客観的証拠として残りにくいものなので、立証のハードルは、かなり高いです。
味方を多く見つけ、証言をしてもらえるといいのですが。
6 最近、あるタレントが、セクハラ疑惑に関する釈明で、「パワハラと言われるならともかく」というような発言をしたとのことですが、パワハラも立派な違法行為であり、このような発言はナンセンスというほかありません。
パワハラやいじめに関するご相談は、J.ウィング総合法律事務所(弁護士羽賀裕之)まで。
http://jwing-lawoffice.com
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