「賃貸物件に住んでいて、そろそろ引っ越しを考えています。
7年間住んでいるのですが、出るときに修繕費などかかるのでしょうか?
6年以上住んでいると、自然劣化のため、壁などの修繕費はかからないと聞いたことがあるのですが。
もちろん、壁に釘などを打ち付けたりはしていません。
ただ、7年も生活しているので、床のフローリングが劣化しています。
それ以外は、壁がタバコの影響で少し茶色になっているのですが。
このような場合は、修繕費がかかるのでしょうか。」
2 まず、民法上、借主は、賃貸借契約終了時に、「原状回復義務」というものを負います。
「原状回復義務」というのは、「元の状態に戻さなければならない」ということです。
しかし、賃貸物件が劣化していくことは、借りて使っている以上、当然のことです。
そこで、通常の使用をした場合に生ずる賃貸物件の劣化等については、既に賃料に含まれていると考えられています。
したがって、借主が負う原状回復義務の範囲は、原則として、通常の使用をした場合に生ずる賃貸物件の劣化を超える部分ということになります。
つまり、借主は、通常の損耗を超える部分については、修繕費を負担しなければならないということです。
3 その際の基準については、国土交通省が、賃貸借契約の原状回復に関して、ガイドラインを出しています。
このガイドラインは、先ほどの考え方を詳細に記載したもので、どこから修繕費を負担しなければならないのかなどについて書かれています。
4 原則は、このガイドラインに従って判断することになります。
ただし、契約自由の原則といって、契約内容は、当事者で自由に決められるという原則があるので、原状回復義務の範囲を当事者間で変えるということは可能です。
もっとも、ガイドラインと違う形で合意する場合には、明確かつ合理的でなければなりません。
5 上記のご質問について、当事者間に原状回復義務の範囲を変える合意がなかったことを前提に述べます。
フローリングの劣化は、通常の使用によって生ずる劣化だと思われますので、修繕費を負担する必要はありません。
壁の変色は、「タバコを吸う」という借主の通常使用とは違う行為によるものになりますので、修繕費を負担しなければなりません。
もっとも、その場合でも必要最小限の範囲になります。
つまり、一部分だけ張り替えれば済むのであれば、全体について負担する必要はありません。
6 ご質問にあった「6年」という数字は、おそらく耐用年数のことを言っているのだと思います。
ここからは、会計の話になるのですが、資産には減価償却といって、劣化分を費用計上する制度があります。
そして、資産ごとに、耐用年数、つまり、どれくらいまで資産価値があるかという期間があります。
耐用年数を過ぎれば、資産価値はゼロ(正確には1円)になります。
そして、カーペットなどは耐用年数が6年なので、「6年以上経過すれば、修繕費がかからない」ということが出てくるのだと思います。
7 マンションやアパートを借りるときには、いっぱい書類があって、全部にしっかり目を通す人は多くないと思いますが、後々のトラブルを避けるためにも、しっかり目を通すことをおすすめします。
賃貸借契約に関するトラブルは、J.ウィング総合法律事務所までご相談ください。
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