2014年06月10日

第8回「賃貸借契約の原状回復義務について」

1 質問
  「賃貸物件に住んでいて、そろそろ引っ越しを考えています。
   7年間住んでいるのですが、出るときに修繕費などかかるのでしょうか?
   6年以上住んでいると、自然劣化のため、壁などの修繕費はかからないと聞いたことがあるのですが。
   もちろん、壁に釘などを打ち付けたりはしていません。
   ただ、7年も生活しているので、床のフローリングが劣化しています。
   それ以外は、壁がタバコの影響で少し茶色になっているのですが。
   このような場合は、修繕費がかかるのでしょうか。」

2 まず、民法上、借主は、賃貸借契約終了時に、「原状回復義務」というものを負います。
  「原状回復義務」というのは、「元の状態に戻さなければならない」ということです。
  しかし、賃貸物件が劣化していくことは、借りて使っている以上、当然のことです。
  そこで、通常の使用をした場合に生ずる賃貸物件の劣化等については、既に賃料に含まれていると考えられています。
  したがって、借主が負う原状回復義務の範囲は、原則として、通常の使用をした場合に生ずる賃貸物件の劣化を超える部分ということになります。
  つまり、借主は、通常の損耗を超える部分については、修繕費を負担しなければならないということです。

3 その際の基準については、国土交通省が、賃貸借契約の原状回復に関して、ガイドラインを出しています。
  このガイドラインは、先ほどの考え方を詳細に記載したもので、どこから修繕費を負担しなければならないのかなどについて書かれています。

4 原則は、このガイドラインに従って判断することになります。
  ただし、契約自由の原則といって、契約内容は、当事者で自由に決められるという原則があるので、原状回復義務の範囲を当事者間で変えるということは可能です。
  もっとも、ガイドラインと違う形で合意する場合には、明確かつ合理的でなければなりません。

5 上記のご質問について、当事者間に原状回復義務の範囲を変える合意がなかったことを前提に述べます。
  フローリングの劣化は、通常の使用によって生ずる劣化だと思われますので、修繕費を負担する必要はありません。
  壁の変色は、「タバコを吸う」という借主の通常使用とは違う行為によるものになりますので、修繕費を負担しなければなりません。
  もっとも、その場合でも必要最小限の範囲になります。
  つまり、一部分だけ張り替えれば済むのであれば、全体について負担する必要はありません。

6 ご質問にあった「6年」という数字は、おそらく耐用年数のことを言っているのだと思います。
  ここからは、会計の話になるのですが、資産には減価償却といって、劣化分を費用計上する制度があります。
  そして、資産ごとに、耐用年数、つまり、どれくらいまで資産価値があるかという期間があります。
  耐用年数を過ぎれば、資産価値はゼロ(正確には1円)になります。
  そして、カーペットなどは耐用年数が6年なので、「6年以上経過すれば、修繕費がかからない」ということが出てくるのだと思います。

7 マンションやアパートを借りるときには、いっぱい書類があって、全部にしっかり目を通す人は多くないと思いますが、後々のトラブルを避けるためにも、しっかり目を通すことをおすすめします。

  賃貸借契約に関するトラブルは、J.ウィング総合法律事務所までご相談ください。
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  東京都新宿区高田馬場1-28-18 和光ビル407



   


posted by 弁護士羽賀裕之 at 21:23| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

第7回「金銭債権の時効について」

1 個人的に友達から借金をした。3年以上、お互い連絡を取っていない場合は、時効になるのか。
 
  「時効」というのは、ある一定期間その状態が続いたのであれば、その継続した状態を尊重しようという制度です。
  今回のように、権利は存在するけれども、請求や弁済などがなされずに、ないのと同じような状態が一定期間続いたのであれば、消滅したものとして扱いましょう、というのが「消滅時効」という制度です。

2 民法167条に、債権の消滅時効期間の原則が定められていて、その期間は10年とされています。
  第6回で扱った過払金請求権も、この原則に従って、消滅時効期間は10年とされています。

3 権利の性質によって、時効期間というのが各種法律によって定められています。法律に特別の規定がなければ、先ほどの民法の規定によって10年となります。
  たとえば、会社がお金を借りたようなときは、商法の規定によって、消滅時効期間は5年となります。
  ちなみに、弁護士報酬などは、民法172条によって、事件終了時から2年となっています。

4 最初のケースは、個人間の借金なので、商法は適用されず、時効期間は10年になります。
  3年ということであれば、未だ時効期間は経過していないことになります。

5 10年を経過したら自動的に消滅するということではありません。
  「その権利は時効によって消滅しています」という債務者からの意思表示ーこれを法律用語で「時効の援用」といいますがー権利を消滅させるためには、この「時効の援用」が必要となります。
  また、10年経過前に、訴訟を起こしたり、債務者が「払いますよ」などと言った場合は、「時効の中断」といって、時効期間が一旦ゼロになって、再度そこから進行することになります。

6 貸した側からすると時効期間には、注意しなければなりません。
  ただ、時効完成前に訴訟を起こしたとしても、相手方が無資力であれば、絵に描いた餅になりかねません。
  どのような契約書が作っているかが大事になります。
  契約を締結する段階で、保証人や抵当権をつけていれば、相手方が無資力であっても、保証人や不動産などから回収することができます。

7 トラブルになる前に相談することが大事です。
  J.ウィング総合法律事務所では、個人のための顧問契約というのもやっています。
  あらかじめ、顧問契約を結んでいれば、「いつ相談していいか」を気にすることなく、「いつでも相談」ができます。

   顧問契約ならJ.ウィング総合法律事務所まで。
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posted by 弁護士羽賀裕之 at 19:19| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

第6回「多重債務の救済について」

1 まず、いわゆる「過払金」と呼ばれるものについて、ご説明します。
  消費者金融などから、お金を借りる場合には、元本の他に利息についても取決めをします。
  しかし、どのような割合で利息を定めてもいいというわけではありません。
  お金を借りる際の利息について定めた法律が、「利息制限法」という法律です。
  利息制限法第1条には、元本の額に応じて、利息の上限額が定められていて、たとえば、元本の額が10万円以上100万円未満の場合には、年18%と定められています。

2 その利息の上限額を超えて契約した場合ですが、利息制限法第1条には、「その超過部分について、無効とする」と規定されています。
  つまり、利息を年30%と決めていても、18%を超える部分の利息は認められず、「利息は年18%」となるわけです。
  消費者金融などは、この利息制限法で決められた利率よりも高い利息を取っていました。
  しかし、この超過部分は無効なので、債務者は、本来払わなくてもいいものを払っていた。だから、この払いすぎたお金、「過払金」を消費者金融などに請求できる、ということです。

3 なぜ、法律で決められているのに、それを破って高い利息を取っていたかという点ですが、以前は、貸金業規制法という法律で、一定の要件を満たせば、利息制限法の利率を超えて支払われた利息も、有効な利息の弁済とみなすという規定がありました。
  いわゆる「みなし弁済」というもので、貸金業者は、これを根拠に利息制限法の利率を超えて貸付を行っていました。
  しかし、最高裁判所は、この要件を厳格に解釈する判決を出したので、それ以後、過払金請求というものが非常に多くなりました。
  そして、過払金請求権の時効は10年なので、最終取引日より10年が経過していなければ、請求できることになります。

4 最高裁の判決以後、貸金業者は、利息制限法の利率に改めましたし、現在は、法律上も「みなし弁済」というものがなくなりました。
  したがって、過払金請求というのは、減ってきています。
  例えば、取引期間が3年や5年という程度では、利息制限法で決められた利率よりも高い利率での貸付が行われていないので、過払金請求権というものが発生しません。

5 少し前までは、過払金が発生したり、債務が大幅に減ったりということがありました。
  しかし、現在では、利息制限法で決められた利率で計算しても、そのようなことは望めません。
  ただ、債務をなくす方法があります。
  それが、「破産」です。
  「破産」というと、何か人生の終わりのようなイメージを持つ人もいると思いますが、破産を申し立てる人は、年間10万人にも及び、決して珍しいことではありません。
  また、破産によるデメリットもそれほど大きくはありません。巷で言われている、戸籍に載るなんてこともありません。

  多重債務でお困りの方は、J.ウィング総合法律事務所までご相談ください。
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posted by 弁護士羽賀裕之 at 17:00| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

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