「バイク通勤を会社の了解の上で行っていますが、先日の雪の日に、いつものコースだと坂が多いので、違うコースで少し遠回りで帰宅していたところ、バイクごと転び怪我をしました。
この場合、労災は適用されるのでしょうか?
ちなみに、その時は、遠回りなので、ついでに友達と一時間食事をするために寄り道を少ししていたのですが、これがダメと同僚に言われたのですが・・・」
2 まず、労災について、ご説明します。
労働基準法では、75条以下において、使用者は労働者の業務上の疾病に関して、補償をしなければならないと定めています。
しかし、使用者が補償金を支払わない、資力がない、などのリスクがあるので、そのリスクを軽減するために、労働者災害補償保険法、略して労災保険法という法律が定められています。
業務上の災害については、労災保険法によって、各種の保険金が給付されます。
通勤途中の災害についても、労災保険法によって保険金が給付されます。
3 通勤途中の災害について、保険金が給付されるのは、通勤に通常伴う危険が具体化した災害です。
また、通勤経路を逸脱し、または往復を中断した場合には、その間及びその後の往復は通勤とは認められないが、それが生活上必要な行為であって、日用品の購入、職業能力開発、選挙権の行使、病院での診療などを理由とする最小限度のものである場合は、逸脱・中断の間を除き通勤として取り扱われます。
4 上記のことを簡単に言うと、起きた災害が通勤と関係あるのかどうか、ということです。
例えば、仕事が終わって、まっすぐ家には帰らず、旅行に行ってしまって、旅行先で事故に遭った。このような場合でも、まだ自宅には帰っていない、つまり通勤途中だから保険金が給付されるというのは、おかしいですよね。
5 本件について検討します。
まず、いつものコースとは違うコースだったということですが、これは、「雪が降って、坂の多いところを避けた」ということなので、これは、「合理的な経路」として問題ないと思われます。
問題は、やはり「友人との食事」です。
「友人と一時間食事」した後、自宅に帰るのは、「会社から帰宅する」というよりも、「友人との食事から帰宅する」というのが自然じゃないでしょうか。
よって、今回の場合は、「通勤途中の災害」とは言えず、労災は適用されないと考えられます。
6 「友人との食事」ではなく、「会社の人との飲み会」だった場合は、どうでしょうか。
この場合は、「状況による」ということになります。
つまり、仕事の関係で打ち合わせをしていて、その際、多少の飲食をしたという程度であれば、大丈夫ですが、ほとんど打ち合わせが行われず、飲食がメインであった場合は、先ほどの「友人との食事」と状況は同じです。
7 食事の後、一旦会社に帰った場合は、どうでしょうか。
この場合も、「状況次第」です。
会社に戻って、本当に仕事をしていればいいですが、ただ単に休憩をしたとか荷物を取りに行ったという程度では状況は変わりません。
実際に、飲食をした後、会社に戻り、その後の帰宅途中での災害が、「通勤災害」に当たるか否かが争われた事例がありますが、その事例では、仕事をしていたとは認められないとして、通勤災害とは認められませんでした。
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