2014年06月16日

第16回「保証について」

1 保証人になっていて、借主が逃げてしまって、自分のところに請求が来てしまった、という話はよくあります。
  まず、保証といっても、「保証債務」と「連帯保証債務」では、法律的な性質は大きく違います。
  「保証債務」というのは、簡単に言うと、「主債務者が払わなかったら、払わなければならない」ということです。
  第一次的には、主債務者が払わなければならず、主債務者が払わない場合に、あくまで二次的に保証人が払わなければならない、という関係にあります。
  言い換えると、債権者が請求してきたときに、「まず主債務者に請求してください」と言えるということです。
  これを「催告の抗弁権」といいます。
  これに対して、「連帯保証債務」というのは、「催告の抗弁権」がありません。
  つまり、債権者は、主債務者に請求することなく、いきなり保証人に請求することが出来ます。

2 このように連帯保証の方が効力が強く、債権者に有利なので、実際には、保証というと「連帯保証」の方が多いです。

3 基本的には通常の法律行為が出来る人であれば、誰でも保証人になれます。
  ただ、保証人を立てる義務がある場合に、弁済の資力がある人でなければならないという制約はあります。

4 保証契約は、その責任の重さから、民法の改正がなされたりしています。
  例えば、保証契約は、口頭だけでも成立するとなっていたんですが、平成16年に、書面でなければ成立しない、と改正されました。
  また、現在、民法について大幅に改正する議論がなされていて、その中に、「個人保証の制限」というのがあります。
  事業者が借り入れる債務であったり、継続的な金銭債務など、保証人の責任が重くなりすぎるようなものについて、個人の保証を制限しようという議論になっています。
  この考え方は、法制審議会の民法改正部会が出した中間試案に載っています。

5 民法という私たちの生活に大きくかかわる法律が改正されようとしています。
  現在は「中間試案」というのが出された段階です。この「中間試案」は法務省のホームページに載っています。
  裁判員制度と同様に、国民各自が意見を持つことが大事だと思います。


  保証等の金銭債務に関するご相談は、J.ウィング総合法律事務所まで。
  http://jwing-lawoffice.com
  東京都新宿区高田馬場1-28-18 和光ビル407






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第15回「解雇について」

1 まず、「解雇」という言葉がどのような場面で使われるのかを説明します。
  労働契約には、期間の定めのあるものと期間の定めのないものがあります。
  期間の定めがある労働契約において、期間満了時に「更新しません」と通告するのは、「雇止め」といいます。
  期間の定めのない労働契約あるいは期間の定めのある労働契約の途中において、労働者を辞めさせる使用者の意思表示を「解雇」といいます。
  これからお話しするのは、期間の定めのない労働契約における、使用者の意思表示を意味する「解雇」についてです。

2 解雇にはいくつか制限がありますが、なかでも重要なのが「解雇権濫用法理」です。
  「解雇権濫用法理」というのは、解雇は労働者の生活に重大な影響を与えるので、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められなければ、無効とする」という考え方で、判例によって認められていました。
  今では、この「解雇権濫用法理」は、労働契約法16条において明文化されています。

3 給料というのは、「ノーワークノーペイの原則」といって、現実に働いていない場合にはもらえないのが原則です。
  しかし、違法・無効な解雇によって、働けなくなった場合、それは使用者の責任によるものなので、この場合は、現実に働いていなくても給料は発生し続けます。
  これは、民法の「危険負担法理」というものによるものです。
  違法・無効な解雇以後の給料のことを「バックペイ」と呼んだりします。

4 違法な解雇を受けてしまった労働者の救済手段としては、まず、都道府県労働局によるあっせん手続があります。
  これは、あっせん委員が当事者の間に入って、話し合いによる解決を目指すものです。
  次に、裁判所による手続があります。
  裁判所による手続としては、もちろん訴訟という手続もあるのですが、訴訟ですと時間がかかってしまうことがあります。
  そこで、現在では「労働審判制度」というものがあります。
  「労働審判制度」は、平成18年から始まった手続ですが、最大の特徴は、原則3回以内に終わるという点にあります。
  訴訟ですと、1回の期日で一方が主張書面を出したら、次の期日に、もう一方が主張書面を出す、というのを繰り返して、最後に本人尋問、証人尋問をして、というふうに非常に時間がかかってしまいます。
  一方「労働審判制度」の場合は、当事者双方が、1回目に主張・証拠を全部出すということになっています。そして、当事者が裁判所に出廷して、裁判官、労使それぞれの専門家である審判委員二人が、当事者から聞き取りを行います。
  イメージとしては、今まで何回も期日を重ねて行っていたものを1回の期日で行ってしまうのです。
  そして、2回目、3回目は、和解に向けて話し合いを行い、まとまれば調停成立となります。

5 「早い」ということは、裏を返すと、「雑になってしまう」という心配もあると思いますが、「雑な結果」を避けるために、代理人の仕事が重要になってきます。
  先ほども申し上げたように、1回目で全部やるので、1回目までに当事者双方が主張と証拠をしっかり整理することが重要です。
  また、依頼者とも密に打ち合わせを行い、1回目の期日でしっかりと言いたいことが言えれば、当事者本人も「雑な手続」という印象は持たないと思います。
  労働審判に臨むにあたっては、その点を大事にしています。

  解雇等の労働問題に関するご相談は、J.ウィング総合法律事務所まで。
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posted by 弁護士羽賀裕之 at 21:30| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

第14回「裁判員制度について」

1 質問
  「裁判員に指名されたら、絶対行かないといけないですか?ショックが大きそうなので行きたくありません。裁判員になって精神的におかしくなったら、損害賠償など出来るのでしょうか?」

2 裁判員制度は、特定の職業や立場の人に偏らず、広く国民の皆さんに参加してもらう制度ですので、原則として辞退できません。
  正当な理由なく出頭しない場合には、10万円以下の過料に処せられることがあります。

3 70歳以上の人や学生などの他、やむを得ない事情があって裁判員の職務を行うのが困難な人、例えば重い疾病や傷害により裁判所に出頭するのが困難な人などは辞退が認められる場合があります。

4 精神的に病気になった場合のサポートについて。
  まずは、裁判員になられた方に過度な精神的負担がかからないように、我々法律に携わる者が細心の注意をしなければならないと思います。
  争点の整理をしっかりして、裁判の長期化を防ぐことなどがそうです。
  また、最高裁が「裁判員メンタルヘルスサポート窓口制度」といって、裁判員であった方を対象とした無料の健康相談、カウンセリングを実施しています。
  臨床心理士、精神保健福祉士等の専門家が相談にあたっています。

5 先日、福島県の女性が、裁判員裁判で、衝撃的な写真等を見て、「急性ストレス障害(ASD)」になったとして、国に対して損害賠償を求める裁判を起こしました。
  このような裁判は、全国で初めてで、その結果の行方が注目されます。
  もっとも、これは、あくまで私見ですが、裁判員制度の一翼を担っている裁判所が、裁判員制度の不備を認め、損害賠償請求を認める可能性は低いのではないかと考えています。

6 ただし、「急性ストレス障害」になってしまった、という事実はあるわけですから、何らかのケアはなされるべきです。
  裁判員は、非常勤の特別職国家公務員という立場にあり、在職中の災害に関しては、国家公務員災害補償法という法律によって、補償がなされる可能性はあります。
  しかし、最高裁によると、裁判員制度が始まって以来、裁判が原因で裁判員経験者が精神疾患を発症し、国家公務員災害補償法によって公務災害と認定された事例はない、とのことです。
  裁判員になられる方は、職業裁判官と違い、普段とは異質の業務に就くわけですから、裁判官や裁判所職員などと同様に考えるべきではないと考えます。
  災害補償法の運用によって、精神疾患を発症された裁判員を保護していくという方法も考えられますが、それよりも、特別な立法の手当をして、裁判員を保護していくべきではないかと考えています。

7 これから裁判員になられる方へのアドバイス。
  刑事裁判そのものについてイメージが出来ていない方が多いのではないかと思います。何事もそうですが、情報がないものについては不安を覚えます。
  裁判の傍聴をしてみるのもいいと思います。マスコミで報道される事件は、くじによる抽選がなされているものもありますが、大多数の事件は、くじによる抽選がなく、誰でも傍聴することが可能です。
  裁判は平日に行われますので、忙しくて行けない方もいらっしゃると思います。また、裁判所は堅苦しくて行きづらいということもあると思います。
  そのような方は、ゲームで裁判員裁判を経験するというのもいいと思います。
  大阪弁護士会が架空の事件を題材にして、裁判員裁判のゲームを作成しています。
  大阪弁護士会のホームページにアクセスするとゲームを体験することが出来ます。
  私も体験してみましたが、非常によく出来ていて、弁護士の私も考えさせられるものがありました。
  裁判員制度には賛否両論がありますが、国民全員に関係するものなので、傍観者にはならずに、各自が意見を持つことが大事だと思います。

  相談はお気軽に。J.ウィング総合法律事務所(弁護士 羽賀裕之)
  http://jwing-lawoffie.com
  東京都新宿区高田馬場1-28-18 和光ビル407





posted by 弁護士羽賀裕之 at 20:41| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

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