2014年06月19日

第30回「当選者数水増し問題について」

1 質問
  「先日、雑誌の懸賞で、当選者数を実際より多く表示する水増し問題が起きました。   
   これは、法律的にどのような問題があるのでしょうか?」

2 「不当景品類及び不当表示防止法」略して「景表法」という法律が問題となります。
  景表法は、不当な表示などによって、一般消費者が誤解して不利益を被らないように、不当な表示を禁止するなどの規制を行っています。
  今回問題となった雑誌においては、各種景品について、それぞれ1名から50名に当選すると表示していましたが、実際には、それよりも少ない人数にしか、景品を発送していませんでした。中には、全く送っていないものや、50名に当選すると表示していながら、3人にしか送っていないというものがありました。

3 今回の当選者水増しは、景表法4条1項2号の「有利誤認」というものにあたるとされました。
  「有利誤認」とは、価格などの取引条件について、実際のものや、他社のものよりも、著しく有利であると誤認させるような表示のことをいいます。
  たとえば、「当選者の100人だけが割安料金で契約できる旨表示していたが、実際には、応募者全員を当選とし、全員に同じ料金で契約させていた場合」、「『他社商品の2倍の内容量です』と表示していたが、実際には、他社と同程度の内容量にすぎなかった場合」などが「有利誤認」にあたります。
  「有利誤認」は、消費者の判断を誤らせ、消費者の利益を害することになるので、景表法で禁止されています。

4 違反した場合には、「措置命令」というものの対象になります。
  「措置命令」とは、消費者庁長官が、違反者に対し、その行為の差し止めや、再び起こらないように防止措置を講じることなどを命令することをいいます。
  今回、具体的には、
  ① 対象商品の取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるものであり、景表法に違反するものである旨を一般消費者へ周知徹底すること。
  ② 再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること。
  ③ 今後、同様の表示を行わないこと。
  これら3点について、命令が行われました。

5 報道によれば、内部告発した人が、「景品を窃取した」ということで懲戒解雇されたとのことです。
  懲戒解雇するためには、当然、懲戒事由に該当することが必要ですが、会社側がそれを立証できるか、つまり、その人が景品を盗んだことを立証できるかどうかが問題となります。
  はっきりとした事実関係が分からないので、断定的なことは言えませんが、経緯からすれば、内部告発して会社に反抗したから解雇された可能性が高いと思います。
  仮に、そのようなことがあれば、決して許されるものではありませんし、もちろん解雇は違法・無効です。

6 「ブラック企業」という言葉が最近話題になっています。
  労働者というのは、非常に弱い立場にあり、声を上げづらいというのが現状です。
  J.ウィング総合法律事務所では、労働者からのご相談に積極的に応じています。


  労働問題でお困りの方は、J.ウィング総合法律事務所(弁護士羽賀裕之)までご相談を。
  http://jwing-lawoffice.com
  東京都新宿区高田馬場1-28-18 和光ビル407
  
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第29回「タクシーでのトラブルについて」

1 質問
  「先日、タクシーでトラブルが起きました。
   『光が丘に行ってください』と言って、出発しました。しばらくウトウトと眠ってしまい、起こされて降りようとしたら、到着した場所が『ひばりが丘』でした。
   『光が丘ですよ!』と言い、再出発して、一応『光が丘』に到着したのですが、料金の支払時に『1万2500円です。』と言われました。
   私がタクシーを拾ったのが渋谷で、渋谷から光が丘までだと、通常は5500円くらいです。
   このような場合でも、運転手に言われたとおり、1万2500円を払わなければいけなかったのでしょうか?」

2 「光が丘」というのは、東京都練馬区にある地名で、他方、「ひばりが丘」は東京都西東京市の方にありますね。
  「光が丘」と「ひばりが丘」は、直線距離にして7~8キロ離れています。
  まず、タクシーに乗って、行き先を告げると、運転手と乗客との間で、「旅客運送契約」という契約が成立します。
  旅客運送契約が成立すると、運転手は、合理的なルートで乗客を安全に目的地に運ぶ債務を負い、他方乗客には運賃支払債務が発生します。

3 「光が丘に行ってください」と言った時点で、運転手には、光が丘へ合理的なルートで行く債務が発生しますが、運転手はこれを怠ったことになります。
  これは、債務不履行にあたります。
  債務不履行にあたるということは、それによって被った損害を債務者ー今回でいえば運転手ーに請求できることになります。
  損害額は、本来のルートで行った場合との差額ということになると思われます。
  損害額全額を運転手に請求できるということであれば、相殺して、通常かかる料金5500円だけを支払えばいいことになります。
  しかし、債務不履行に基づく損害賠償請求においては、損害額を調整する規制として、「過失相殺」というのがあります。
  「過失相殺」とは、債務不履行にあたって、債権者にも過失があった場合には、その過失割合に応じて、損害額を減額する制度です。

4 今回でいうと、「債権者」は、質問者の方になります。
  ルートを外れたところで指示できたにもかかわらず、寝てしまっていて指示できなかった。
  最初に行き先を告げたところで、ルートの確認等、しっかりと確認していなかった。
  これらの点が過失として考えられます。
  もっとも、その過失は大きくないと考えられます。

5 ちなみに、今回の事例とは違い、ちゃんと合理的なルートで行って、正規の料金を請求されたけれども、着いたところでお金がないことに気づいて、何も言わず逃走した場合、犯罪になるのかという問題があります。
  まず、タダ乗りをしようと思っていたけれども、それを告げずに走らせたというわけではないので、騙す行為というのがなく、詐欺罪は成立しません。
  では、窃盗罪が成立するかというと、この場合、成立しません。
  財物という「物」ではなくて、代金支払義務などを免れた場合のことを「利益窃盗」と呼んだりしますが、現行法上、これは不可罰となっています。
  よって、この場合、犯罪は成立しません。
  もっとも、いけないことには変わらないので、絶対にしないようにしましょう。


  損害賠償に関するご相談は、J.ウィング総合法律事務所(弁護士羽賀裕之)まで。
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第28回「著作権について(第2弾)」

1 質問
  「学校の広報誌に、漫画のキャラクターを載せたら著作権侵害になるのでしょうか?」

2 まず、非常に抽象的な話なのですが、キャラクター自体には著作物性はありません。
  キャラクターというのは、漫画や小説に出てくる架空の人物などの人格そのものであり、それ自体は抽象的概念であって、著作物とはならないということです。
  もっとも、漫画に描かれている個々のキャラクターは著作物となりますから、学校の広報誌に漫画のキャラクターを載せることは著作権の問題となります。

3 前回は、著作者保護という観点から著作権法の説明をしました。
  著作者の権利が一切保障されなければ、人々の文化的活動の意欲がそがれ、文化的発展は望めなくなります。また、その経済的利益も保護する必要があります。
  そこで、著作者に様々な権利を認め、著作者の許可なくして、他人が自由に利用できないこととしました。
  一方で、著作物というのは、文化的資産であり、常に著作者の許可がなければ一切利用できないということになると、かえって文化的発展を阻害することとなります。
  そこで、著作権法では、30条以下に、著作者の許可がなくても利用出来る場合というのを定めています。
  例えば、著作権法30条では、私的使用のための複製について、著作者の許可が不要としています。
  個人的に、または家庭内だけで、私的使用の目的で利用する場合です。
  この規定によって、例えば友人から借りたCDを、自分で楽しむだけの目的で録音ができます。
  また、著作権法46条によって、例えば、公園などの銅像や彫刻、建築の著作物を写真撮影や放送で使うことが出来ます。
  ただし、その写真を販売する目的で、写真撮影することなどは許されません。

4 学校での利用に関しては、著作権法35条で自由に利用できる場合が定められています。
  その要件は、
  ①公表されている著作物を
  ②学校その他の教育機関において
  ③教育を担任する者および授業を受ける者が
  ④その授業の過程において使用する目的で
  ⑤相当な態様での複製
  です。
  例えば、小学校や中学校において、担任教員が、授業にあたり教材として、他人の著作物をコピーする場合です。この場合、著作者の許可は不要です。
  今回のように、「学校の広報誌」に載せることは、「授業の過程における使用」とは言えず、原則通り、著作者の許可が必要となります。

5 許可が必要か否かの判断を助けるためにガイドラインが定められています。
  「学校その他の教育機関における著作物の複製に関する著作権法第35条ガイドライン」というものです。
  学校で、何らかの著作物を利用する場合には、このガイドラインを参考にするといいと思います。


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第27回「著作権について」

1 質問
  「先日、ある書籍の舞台化について、著作権が問題になりました。
   そもそも、著作権とはどういうものなのでしょうか?」

2 著作権について規定した著作権法では、「著作物」を保護対象としています。
  「著作物」について、著作権法2条には、「思想又は感情を創作的に表現したもの」云々となっています。
  これだけでは、ちょっと分かりづらいですが、著作権法10条には、著作物の例示がなされていて、そこには、「小説、脚本、講演、音楽、絵画、映画、写真」などが例として挙げられています。
  「頭の中で創造して、それを表現したもの」ですね。

3 この著作物について、著作物を作った人ー著作者ーは、複製権、展示権などと呼ばれる色々な権利を持つことになります。
  この色々な権利をまとめて「著作権」と呼んでいるのです。

4 今回の書籍の舞台化では、原作者の「翻案権(ほんあんけん)」という権利が問題となります。
  「翻案」とは、既存の著作物に依拠して、それとは表現形式が異なる別の著作物を創作することをいいます。
  著作者ではない人が、勝手に翻案すれば、著作者の翻案権を侵害することになります。

5 今回、「原案だから、著作者の許可はいらない」ということが言われています。
  先ほど、翻案とは、「既存の著作物に依拠して、別の著作物を創作すること」と述べましたが、既存の著作物に依拠していれば、全て翻案というわけではありません。
  新たに創作した著作物から、既存の著作物の本質的特徴が読み取れなければ、翻案とはいえません。
  つまり、既存の著作物のアイディアだけを拝借し、別の著作物を作った場合には、翻案とはいえず、著作者の許可は不要になります。
  このことを「原案」という形で言っているのだと思われます。
  ただ、翻案かそうではないかは微妙です。
  したがって、後のトラブルを避けるために、書面での明確な承諾を得ておくべきでした。

6 著作権を侵害された著作者に対する救済手段としては、差止請求権及び損害賠償請求権があります。
  これによって、著作者を保護しています。


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