「先日公開された映画で、子どもの取り違えについて扱っていました。
子どもの取り違えの場合の慰謝料や罪について、教えてください。」
2 子どもの取り違えというのは、現在では、ほとんどないと思われますが、過去には、度々起きていたようです。
その場合は、病院の責任が問題となります。
わが子を育てる権利、実親に育ててもらう権利を侵害するものとして不法行為責任が発生します。
また、病院と両親との間には、病院において、母親が胎児を安全に分娩することを助け、生まれた新生児を看護することを内容とする分娩助産契約が締結されると考えられます。
そして、この分娩助産契約は、出産した新生児を他の新生児を取り違えることなく、その両親に引き渡すという債務を含むので、取り違えをしてしまった場合には、債務不履行責任が発生します。
3 実の親子であると信じて生活してきたにも拘らず、それが根底から覆された場合の精神的苦痛は計り知れないものがあります。
過去の裁判例では、数百万から1000万円を超える慰謝料が認められたことがありました。
4 時効について。
不法行為については、損害及び加害者を知ってから3年の時効期間が定められています。また、行為の時から20年という除斥期間というものがあります。
除斥期間というのは、時効と同様に、期間が経過すると権利が消滅してしまう制度です。
したがって、3年の時効期間が経過していなくても、行為の時から20年経過していると、除斥期間によって、不法行為責任を追及することはできなくなります。
不法行為責任については、20年の経過で責任を問えなくなりますが、債務不履行に基づく損害賠償請求は、認められる可能性があります。
債務不履行に基づく損害賠償請求権の時効期間は、「権利を行使することができる時」から10年と定められています。
数字だけを見ると債務不履行の方が不利なようにも見えますが、この「権利を行使することができる時」、つまり、時効期間の起算点の捉え方によって、債務不履行のほうが有利となります。
東京高裁の裁判例では、子どもの取り違えというのは、外観上非常に分かりにくく、取り違えが起きた時点では、権利の行使は現実的に期待できず、その時点では時効は進行しないとしました。そして、血液型の矛盾が判明した時点で、権利の行使が現実的に期待できたとして、その時から時効が進行するとしました。
結果として、取り違えが起きてから約45年経過していた事案において、時効は成立していないとして、請求が認められました。
5 取り違えを知ったときの衝撃は、計り知れません。
お金で解決できればまだしも、現実には、その後の生活があります。
単純に子どもを交換して「はい終わり」というわけにはいかないでしょう。
6 看護師が、わざと取り違えていた場合には、未成年者誘拐罪になる可能性があります。
ただし、未成年者誘拐罪の時効は5年なので、それを経過してしまえば、罪には問われません。
慰謝料請求に関するご相談は、J.ウィング総合法律事務所(弁護士羽賀裕之)まで。
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