2014年06月30日

第46回「ネット通販でのトラブルについて」

1 質問
  「先日、ネット通販で、『食卓テーブルと椅子の三点セット2万円』という激安商品を買いました。
   ところが、商品が送られてきてビックリしました。
   おもちゃのようなミニサイズで手に乗るサイズでした。
   騙されたと思い、すぐに業者に電話しました。
   すると、『ネットにサイズが書いてありますよね。』と言われました。
   よく見ると、「cm」ではなく「mm」と記載してありました。
   けれど、『こんなおもちゃが2万円は高い』と言うと、『手作りですので』と言われ、話になりません。
   これは、どうにもならないのでしょうか?」

2 どういう表示がなされていたかが問題となります。
  「食卓テーブル」とはっきり書かれていたのであれば、「手に乗るサイズ」が「食卓テーブル」とはなり得ないことから、詐欺の可能性が高いです。
  この場合は、契約を取り消して、返金を求めることになります。

3 本件のような通信販売は、クーリングオフの適用対象外なので、クーリングオフをすることは出来ません。

4 他には、錯誤の主張が考えられます。
  本当は、食卓テーブルが欲しかったのに、おもちゃのテーブルを買ってしまったという錯誤があるので、民法95条の規定によって、契約の無効を主張することが考えられます。
  ただし、この錯誤は、重大な過失があると主張できません。
  今回でいえば、サイズ表記があまりにも小さかったということであれば、重大な過失は認められないとして、錯誤主張が認められる可能性があります。

5 ネット通販における操作ミスに関しては、先ほどの「重大な過失」について、電子契約法に特別規定があります。
  電子商取引では、消費者は事業者が設定した手順に従って契約するしかなく、ミスが生じやすいということで、消費者が申込みを行う前に、その申込み内容などを確認する措置などを事業者が講じない場合には、「重大な過失」の有無にかかわらず、錯誤無効が主張できることになります。
  例えば、商品1個を購入するつもりであったのに、注文ボタンをダブルクリックしてしまった場合なども2個ではなく1個の注文として救済されることがあります。

6 トラブルが起きる前に気を付けておくべきこと。
  記載されている表示や、操作に気を付けるということは、もちろんですが、証拠保存も大事です。
  表示されている画面を保存すること、この場合は、「画面キャプチャ」という方法が有効です。「画面キャプチャ」とは、ディスプレイに表示されている画面をそのまま画像として保存する方法ですが、この方法を取れば、URLとともに保存でき、「偽造」という反論を防ぐことが出来ます。
  また、代金を振り込み入金した場合には、振込明細の保存です。
  これらのことをやっておけば、相手方に返金を求める際、有利になります。


  ネット通販でのトラブルは、J.ウィング総合法律事務所(弁護士羽賀裕之)までご相談を。
  http://jwing-lawoffice.com
  東京都新宿区高田馬場1-28-18 和光ビル407

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posted by 弁護士羽賀裕之 at 22:14| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

第45回「『いいよ』の言葉の勘違いについて」

1 質問
  「先日、同僚に、着物の生地ですごく良いのがあるということで、見本を見せられました。
   『私も買うので、あなたの分も一緒に頼もうと思ってるけれど、頼んでもいいかな?』と言われたので、『いいよ。』と言って、その場は終わりました。
   ところが数日後、同僚が商品を持ってきて、『お金を下さい』と言われました。
   私が『いいよ』と言ったのは、『いらない』という意味で言ったのですが、同僚は、『買っていい』と判断したらしいのです。
   『もう返品は出来ないから支払ってほしい』と言われました。
   このような場合でも、支払わなければならないのでしょうか?」

2 まず、当事者間で、契約が成立したのか否かが問題となります。
  契約というのは、例えば売買契約であれば、「売りましょう」「買いましょう」という意思表示の合致によって成立します。
  この意思表示の合致がなければ、契約は成立しません。
  本件の場合、同僚の言葉に対し、質問者の方は、頼む意思がなく「いいよ」という返事をしているので、当事者間に意思表示の合致は認められません。
  「いいよ」というのは、「はい」にも「いいえ」にも捉えられますが、そのような曖昧な返事では、契約成立と認められません。

3 ただし、契約は成立していませんが、「不法行為」という形で損害賠償請求されるおそれはあります。
  「不法行為」というのは、民法709条以下に規定されていて、「故意または過失に基づく違法行為で、相手方に損害を与えた場合には、その損害を賠償しなければいけない」というものです。
  今回、質問者の方は、「いいよ」という曖昧な返事をするという「過失」があり、これによって、相手方は生地代金分の損害を被ったということになると、質問者の方はお金を支払う必要があります。

4 もっとも、全額支払う必要はないと考えます。
  相手方にも、少なくとも「よく確認しなかった」という過失があると思われますので、「過失相殺」がなされると思います。
  双方の過失割合によって、質問者の方が負担する金額が決まります。
  また、相手方が質問者の方をだますつもりであった場合は、そもそも不法行為が成立しないと思われます。
  例えば、質問者の方がよく曖昧な返事をする方だということを知っていて、多く買った場合は割引になるところを正規の値段で請求してきたという場合。この場合、質問者の方の性格を利用して、割引分を儲けようという意思があるので、詐欺にあたります。
  このような場合は、一切負担する必要はありません。
  念のため、同僚に領収証などを見せてもらったほうがいいかもしれません。

5 「いいよ」の他にも「結構です」などが曖昧な表現として取り上げられますが、このような表現は絶対避けるべきです。
  最初の時に、しっかり確認するだけで、こういったトラブルは避けられますから、気を付けていただきたいです。


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posted by 弁護士羽賀裕之 at 21:30| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

第44回「未公開株詐欺について」

1 質問
  「半年前に知人の紹介で、『未公開株を今買うと数か月で倍になる』と言われ、100万円でその株を購入しましたが、先日その会社は倒産したとの話でした。
   100万円は返ってこないのでしょうか?
   先輩に相談したら、『それは無理。楽して倍になるという選択をしたのは、あなたが甘い。そんな簡単にはお金が儲かることはない』と言われました。」

2 いわゆる未公開株詐欺というものです。
  未公開株とは、証券取引所に上場されていない株式のことをいいます。
  上場されていませんので、証券取引所で売買をすることができません。
  未公開株を販売できるのは、当該未公開株の発行会社や登録を受けた証券会社に限られます。
  証券会社における販売においても、「グリーンシート銘柄」と呼ばれる株式以外の販売はしていません。
  よって、少なくとも発行会社や登録を受けた証券会社以外からの勧誘の場合は、詐欺の可能性が非常に高いです。

3 このような場合、交渉や訴訟によって、返金を求めていって、返金がなされる可能性もあります。
  もっとも100%戻ってくるとは限りません。
  詐欺を働くようなところは、逃げてしまうなどして、回収できないことがあるからです。

4 ところで、「株式」というのは、簡単に言うと、株式会社に対する持分のことを言います。
  会社に対して出資をしたということは、「物」で言えば所有権を取得したことになります。ただ、会社は「物」ではないので、「持分」という、「会社に対して色々な権利を持つ地位」を持つことになります。
  そして、会社に対する持分が「株式」という形を取っているのが、株式会社となります。  
  「株式」のこのような性質から、当然、「株式」には財産的価値があり、投資家の方々は、「株式」を売買することによって利益を上げます。
  
5 「社員」というと、一般的には、「会社で働いている人」つまり従業員を指します。
  しかし、法律用語においては、「社員」とは、会社に対して持分を有している人、株式会社で言えば「株主」を指します。
  話はそれますが、このように同じ言葉でも、一般的な意味と法律用語としての意味が違うものがあります。
  たとえば、「善意」と「悪意」といったら、一般的にはどのような意味になるでしょうか?
  「善意」は、相手によい結果を導こうとして行為を行う気持ち、「悪意」とは、その反対で、相手のよくない結果を望む心を指すと思います。
  しかし、法律用語においては、「善意」とは、「ある物事について知らないこと」、「悪意」とは、「ある物事を知っていること」をいいます。
  知っていた場合と知らない場合で、効果を分けなければいけない場合があるので、このような法律用語が使われます。


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posted by 弁護士羽賀裕之 at 21:06| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

第43回「スマホを見ながらの事故」

1 質問
  「先日、スマホを見ながら歩いていたら自転車に衝突しました。
   腕の骨を折る事故でした。
   自転車を運転していた人に治療費を請求したら、相手は『あなたがスマホを見て歩いていて急に立ち止まるのは、あなたの不注意でしょ。』と、逆に自転車の修理費を請求されました。
   やはり、私が悪いのでしょうか?
   修理費を払わなくてはならないでしょうか?」

2 本件では、交通事故における過失相殺・過失割合が問題になります。
  交通事故における過失割合は、第33回「交通事故について」でも述べました。
  その時は、「交通事故における過失割合は、事故態様によって、ある程度類型化されている」というお話をしました。
  そして、その類型化にあてはめて、過失割合のベースをお伝えしました。

3 ただし、今回は、そうではありません。
  この類型化というのは、「歩行者と自動車」「自動車同士」「バイクと自動車」「自転車と自動車」などについては、なされているのですが、「歩行者と自転車」については、なされていません。
  何故かと言うと、双方が、必ずしも道交法上のルールを熟知しているとは言えず、道交法に従った通行をしていない場合も多いからです。
  自転車については、自動車や原動機付自転車などと異なり、免許が要らず、誰でも自由に乗ることが出来るため、法的規制について、あまり意識されていません。
  また、歩行者についても同様で、法的規制について、あまり意識されていません。
  このような状況で、「歩行者と自転車の事故」を「歩行者と自動車の事故」と同様に扱ってよいのか疑問がありますし、逆に、自転車の責任を軽くし過ぎるのも疑問が残ります。

4 では、今回のような「歩行者と自転車の事故」について、過失割合をどのように考えるかというと、過去の裁判例などを参考にして、ケースバイケースで考えます。
  今回は、「スマホを見ながら歩いていたところ、自転車に衝突した」ということは分かりますが、それ以外の詳しい事情が分からないので、正確なことは言えませんが、歩行者の前方不注視の事案ということは言えるのかもしれません。
  似たような事案で「傘を低く前方に出してさし、前方を見ることができない状態で道路を歩行していた歩行者」に3割の過失を認めた事案があります。
  ただ、これも「傘を低く前方に出してさし、前方を見ることが出来ない状態」だった事案が全て3割の過失があるというわけではありません。
  今回も正面衝突だったのか、横からの衝突だったのかでも違うことになります。
  少なくとも、いくらかの過失はあると思います。

5 そして、治療費、修理費それぞれについて、双方の過失割合によって処理することになります。
  治療費については、自転車運転者に対して、その過失割合分を請求し、修理代については、質問者の方の過失割合分を自転車運転者に支払うことになります。
  といっても、現実には、このようにすることは煩雑なので、差し引き計算・相殺をして、差額をどちらかが払うことになります。

6 最近は、自転車の通行ルールも変わりました。
  自転車と歩行者の事故が増えてきたために、自転車の通行マナーなどが問題となってきました。
  このような状況から考えると、自転車の規制を厳しくし、過失割合の類型化もなされてくるかもしれません。
  ただ、個人的には、今の道路状況では、自転車が非常に通行しにくくなっていて、自転車の通行ルールだけを厳しくすることには疑問を感じています。
  道路状況の整備を早急になされるべきです。


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posted by 弁護士羽賀裕之 at 19:08| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

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