「先日、ある有名人の子どもがDNA鑑定の結果、本当の子どもではないのではないかということが問題となりました。
このような場合、どのように争っていくのでしょうか?」
2 単に血のつながりがないといっても、その子どもの法律上の地位の違いによって、争い方も違ってきます。
まず、子どもというのは、「実子」と「養子」に分かれます。
「実子」というのは、血縁上の子、つまり親と血のつながりのある子どもをいいます。
「養子」というのは、血のつながりはないけれども、「養子縁組」をした結果、その親の、子としての地位を得るというものです。
今回は、「実子」かどうかが争われています。
そして、「実子」は、「嫡出子」と「非嫡出子」に分かれます。
3 非嫡出子については、相続分差別があったということで、以前、お話ししました。
復習しますと、「嫡出子」は、婚姻関係にある男女から生まれた子ども、「非嫡出子」は、婚姻関係にない男女から生まれた子どもをいいます。
「非嫡出子」の場合は、認知によって、親子関係が生まれますから、その争い方は、専ら、認知が有効か無効かになります。
今回は、婚姻関係にあった時に生まれた子どもだと思いますので、「嫡出子」の問題となります。
4 争い方は、どういう嫡出子かによります。
つまり、嫡出子には、「推定される嫡出子」と「推定の及ばない子」というのがあります。
「推定される嫡出子」というのは、文字通り、嫡出子であると推定される子をいいますが、妻が婚姻中に妊娠した子は、夫の子と推定される、つまり嫡出子と推定されます。
もっとも、婚姻中に妊娠したかどうかを証明することは難しいので、婚姻成立から200日後、あるいは婚姻の解消から300日以内に生まれた子は、婚姻中に妊娠したと推定されることとなっています。
この「推定される嫡出子」の場合は、嫡出否認の訴えというものによらなければ、親子関係を否定することはできません。
5 ただし、今回、「嫡出否認の訴え」を起こすのは無理だと思われます。
なぜなら、「嫡出否認の訴え」というのは、提訴期間、訴えることの出来る期間というのが定められていますが、その期間は、夫が、子どもが生まれたことを知った時から1年とされています。
当然、今回の場合、1年以上経過していると思いますので、嫡出否認の訴えによることは出来ません。
6 では、全く争うことが出来ないかというと、そういうわけでもありません。
先ほどの「推定の及ばない子」にあたる場合は、提訴期間がない「親子関係不存在確認の訴え」を起こすことが出来ます。親子関係と書いて、「しんしかんけい」と読みます。
嫡出性を推定するというのは、夫婦が同居し、正常な婚姻生活を営んでいることを前提としています。
妻が夫によって妊娠することが不可能な場合にまで、嫡出子と推定し、提訴期間のある嫡出否認の訴えによらなければならないというのは、不都合です。
そこで、妊娠不能な事実がある場合には、「推定の及ばない子」として、提訴期間のない「親子関係不存在確認の訴え」を起こせることとしています。
妊娠不能な事実がある場合とは、事実上の離婚状態にあり夫婦関係が断絶していた場合、夫が行方不明であった場合や海外滞在中あるいは刑務所などにいた場合などです。
このような事実があったのであれば、親子関係を争うことができます。
認知や養育費に関するご相談は、J.ウィング総合法律事務所(弁護士羽賀裕之)まで。
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