2014年07月04日

第58回「憲法について 第2弾」

(注:以下は、平成26年4月29日に放送されたものです。)
1 質問
  「安倍首相が、集団的自衛権行使を容認する憲法解釈変更について、閣議決定を行うと言われています。
   その際、『内閣法制局』という機関が、よく話題に上ります。
   『内閣法制局』というのは、どういう機関なのでしょうか?」

2 内閣法制局というのは、内閣に置かれる行政機関であって、内閣が国会に提出する法案について事前審査をしたり、内閣に対して、法制に関する意見を述べたりします。
  その審査事項や、意見は、憲法適合性に関する部分が含まれます。
  このような内閣法制局の性質から、「法の番人」と呼ばれたりします。

3 憲法81条には、「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」と規定されています。
  憲法に適合するか否かを審査する権限を「違憲審査権」と言いますが、違憲審査権を有しているのは、裁判所であり、最終的な違憲審査権というのは、最高裁判所が有しています。
  では、なぜ、内閣法制局という機関があり、「法の番人」と呼ばれているかというと、それは、裁判所が持つ違憲審査権の性格によります。
  日本の憲法においては、裁判所が持つ違憲審査権というのは、抽象的に法律などが憲法に適合するか否かを審査する権限ではないとされています。
  つまり、何ら具体的な事件が起きていないにも拘らず、法律や内閣の行動について、憲法に適合するか否かの判断を下すものではないのです。
  裁判所は、具体的な事件が起きて初めて、違憲審査権を行使します。
  これを「付随的審査制」とか「具体的審査制」と呼んだりします。

4 裁判所が常に表に出てくるわけではありません。
  例えば、仮に、安倍内閣が、集団的自衛権行使容認へと憲法解釈を変更する閣議決定を行ったとしても、直ちに最高裁判所が違憲審査権を行使することは出来ません。
  また、先ほど違憲審査権の行使には、具体的な事件であることが必要と言いましたが、その他にも、非常に高度な政治問題については、違憲審査権の行使を控えるという「統治行為」というものもあります。
  最高裁判所の違憲審査権には、色々と制約があるのです。
  そこで、内閣法制局が必要となります。
  最高裁判所の出番が常にあるわけではないので、内閣法制局の役割は非常に重要です。
  しかし、内閣法制局が内閣の言いなりであっては、意味がありません。
  以前、憲法をテーマに扱ったとき、「立憲主義」というお話をしたと思いますが、憲法というのは、権力を縛って、国民の権利を守るためにあります。   
  内閣というのは、まさに権力を行使する側ですから、行使する側と、憲法を判断する側が同一では、まさに立憲主義が崩壊してしまいます。
  そこで、内閣法制局には、強い独立性が求められるのです。

5 内閣法制局長官の任命権限は、内閣にありますが、その独立性を保つために、内部昇格が慣例となっていました。
  しかし、安倍内閣は、その慣例を無視し、外務官僚であり、集団的自衛権行使容認に前向きな小松一郎氏を内閣法制局長官に任命しました。
  内閣法制局というのは、内閣にとって邪魔な存在なのです。ただ、その邪魔な存在が立憲主義を維持する上で非常に重要なのです。
  安倍内閣は、内閣法制局の独立性を奪って、思うがままに、政治を進めようとしています。

6 これは、非常に怖いことです。
  ただ、裁判所の権限に限界がある以上、憲法が自動的に国民の権利を守ってくれるということはありません。
  そのことを自覚して、国民一人一人が権力の監視を心がけなければいけません。


  J.ウィング総合法律事務所
  弁護士 羽賀 裕之
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posted by 弁護士羽賀裕之 at 19:37| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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