2014年07月03日

第55回「副業について」

1 質問
  「最近は、本業の他にバイトをし、自宅のローン返済などにあてる人がいると聞きます。
   副業を認める企業が増えているのか、内緒でしているのでしょうか。
   副業が見つかった場合は、クビになってしまうのでしょうか?」

2 副業というのは、兼業とは二重就職とか言われたりします。
  副業については、就業規則において、「会社の承諾を得ずに他社に雇われ、または自ら事業を営むこと」を懲戒事由とするなど、禁止している会社が多いと思われます。
  これは、本業に影響が出ては困る、というのがその制定理由だと思われます。

3 禁止されているにも拘らず、副業をしてしまったら、クビになってしまうのか?
  これは、「労働者の私生活の自由」との関係をどう考えるかという問題です。
  つまり、本来、労働者というのは、就業時間以外の行動について、何ら会社から規制を受けないのが原則です。
  なぜなら、就業時間以外の行動全てについて、会社から規制を受けてしまっては、労働者の人権が侵害され、私生活の自由というのがなくなってしまうからです。
  一方、無制限に副業というのを許してしまえば、会社の利益が損なわれる可能性があります。
  会社の利益と労働者の利益というのはバッティングしています。
  そこで、この両者の利益のバランスを取り、懲戒事由を限定的に解釈するという方法が取られています。
  つまり、「労務の提供や事業運営、あるいは企業の信用・評価に支障の生ずるおそれのある兼業」に限って懲戒の対象とするという考え方です。
  裁判例の多くは、この考え方を取っています。

4 例えば、深夜に及ぶ長時間の勤務で翌日の勤務に影響を与えるものや、競合する会社への就職・事業経営など事業運営を害するもの、が懲戒事由にあたるとされた事例があります。
  逆に、懲戒事由に該当する副業でも、会社がそれを黙認していた場合には、懲戒処分は、権利の濫用として無効とされた事例もあります。

5 懲戒事由に該当するからといって、全てクビではありません。
  懲戒処分というのは、「処分の相当性」というのが求められます。
  つまり、懲戒の対象となる行為に対して、処分が不当に重い場合には、その懲戒処分は無効となります。
  クビ、つまり解雇というのは、懲戒処分の中で、最も重い処分ですから、その該当性については、慎重に判断する必要があります。

6 副業をするということは、それだけ、私生活の自由がなくなるということですから、そのような働き方をしなくても済む社会になってほしいです。


  懲戒処分や解雇に関するご相談は、J.ウィング総合法律事務所(弁護士羽賀裕之)まで。
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posted by 弁護士羽賀裕之 at 21:34| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

第54回「親子関係について」

1 質問
  「先日、ある有名人の子どもがDNA鑑定の結果、本当の子どもではないのではないかということが問題となりました。
   このような場合、どのように争っていくのでしょうか?」

2 単に血のつながりがないといっても、その子どもの法律上の地位の違いによって、争い方も違ってきます。
  まず、子どもというのは、「実子」と「養子」に分かれます。
  「実子」というのは、血縁上の子、つまり親と血のつながりのある子どもをいいます。
  「養子」というのは、血のつながりはないけれども、「養子縁組」をした結果、その親の、子としての地位を得るというものです。
  今回は、「実子」かどうかが争われています。
  そして、「実子」は、「嫡出子」と「非嫡出子」に分かれます。

3 非嫡出子については、相続分差別があったということで、以前、お話ししました。
  復習しますと、「嫡出子」は、婚姻関係にある男女から生まれた子ども、「非嫡出子」は、婚姻関係にない男女から生まれた子どもをいいます。
  「非嫡出子」の場合は、認知によって、親子関係が生まれますから、その争い方は、専ら、認知が有効か無効かになります。
  今回は、婚姻関係にあった時に生まれた子どもだと思いますので、「嫡出子」の問題となります。

4 争い方は、どういう嫡出子かによります。
  つまり、嫡出子には、「推定される嫡出子」と「推定の及ばない子」というのがあります。
  「推定される嫡出子」というのは、文字通り、嫡出子であると推定される子をいいますが、妻が婚姻中に妊娠した子は、夫の子と推定される、つまり嫡出子と推定されます。
  もっとも、婚姻中に妊娠したかどうかを証明することは難しいので、婚姻成立から200日後、あるいは婚姻の解消から300日以内に生まれた子は、婚姻中に妊娠したと推定されることとなっています。
  この「推定される嫡出子」の場合は、嫡出否認の訴えというものによらなければ、親子関係を否定することはできません。

5 ただし、今回、「嫡出否認の訴え」を起こすのは無理だと思われます。
  なぜなら、「嫡出否認の訴え」というのは、提訴期間、訴えることの出来る期間というのが定められていますが、その期間は、夫が、子どもが生まれたことを知った時から1年とされています。
  当然、今回の場合、1年以上経過していると思いますので、嫡出否認の訴えによることは出来ません。

6 では、全く争うことが出来ないかというと、そういうわけでもありません。
  先ほどの「推定の及ばない子」にあたる場合は、提訴期間がない「親子関係不存在確認の訴え」を起こすことが出来ます。親子関係と書いて、「しんしかんけい」と読みます。
  嫡出性を推定するというのは、夫婦が同居し、正常な婚姻生活を営んでいることを前提としています。
  妻が夫によって妊娠することが不可能な場合にまで、嫡出子と推定し、提訴期間のある嫡出否認の訴えによらなければならないというのは、不都合です。
  そこで、妊娠不能な事実がある場合には、「推定の及ばない子」として、提訴期間のない「親子関係不存在確認の訴え」を起こせることとしています。
  妊娠不能な事実がある場合とは、事実上の離婚状態にあり夫婦関係が断絶していた場合、夫が行方不明であった場合や海外滞在中あるいは刑務所などにいた場合などです。
  このような事実があったのであれば、親子関係を争うことができます。


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posted by 弁護士羽賀裕之 at 21:07| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

第53回「福島原発事故について」

1 質問
  「東日本大震災から3年が経過しました。
   福島の原発も甚大な被害をもたらしました。
   賠償については、どのようになっているのでしょうか?」

2 原発事故については、原子力損害の賠償に関する法律、略して原賠法という法律があります。
  原賠法は、東電のような原子力事業者に対して、原発事故による損害賠償につき、無過失責任を負わせています。
  原賠法は、「異常に巨大な天災地変」の場合には、原子力事業者を免責すると規定していますが、今回の東日本大震災は、「異常に巨大な天災地変」に該当しないと考えられています。
  もちろん、東日本大震災は、非常に大きな地震でしたが、原賠法にいう「異常に巨大な天災地変」には該当しないということです。

3 原発事故と「相当因果関係」のある損害について、東電は責任を負います。
  「相当因果関係」とは、ある事実から、こういう事実が通常起こるだろうという関係です。
  相当因果関係といっても、どのような損害が賠償の対象となるのか、一般の人には分かりにくいため、その範囲について判断基準を示した「中間指針」というのがあります。
  もちろん、この「中間指針」に該当しなくても、相当因果関係がある限り、賠償の対象になります。

4 損害賠償請求の方法。
  まず、東電に対して直接請求するという方法があります。
  東電と合意が出来れば、東電から賠償を受けます。
  他に、原子力損害賠償紛争解決センターによるADR手続というのがあります。
  これは、中立・公正な立場の仲介委員が、双方の事情を聞いて、合意による紛争解決を目指す、裁判外の手続です。
  東電に直接請求する場合は、東電が賠償を渋るおそれがありますが、このADR手続の場合は、中立の第三者が和解案を示してくれます。
  もっとも、仲介委員が提示した和解案につき、東電は拒否することも出来ます。

5 東電が和解案を拒否した場合は、裁判所に対して訴訟を起こします。
  裁判所による判決が出れば、東電に対して強制的に支払を求めることが出来ます。
  裁判所の場所は、被害者の近くか、東京地裁になります。
  ADRについては、基本的に東京か郡山になります。


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posted by 弁護士羽賀裕之 at 20:44| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

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